どんなに崇高な理念や、純粋で私心のない大義をもっていても、それが重要で、実現させなければならない目的であればあるほど、哲理や戦略が稚拙であってはならない。実現できなければ、崇高な理念も思想も哲学も、絵に描いた餅のようであるし、寝言でしかない。
事業経営には偶然が付きものであるが、繁栄発展にはそれ以上に必然というものが付きものである。大切なのは、繁栄発展を必然的に起こせる方向性を、全員が知り、その方向性に沿って、全員の情熱と力を合わせていくことだ。
整骨院の繁栄発展の究極の戦略は、たった2つのコンセプトから成り立っている。
ひとつは「成長拡大させる」こと。
もうひとつは、「安定させること」である。
この2つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。2つのうち、どちらかのひとつが欠けても整骨院の永続した繁栄発展はあり得ない。
まず「成長拡大」させることとは、具体的にどういうことなのか?
整骨院の「成長拡大」とは、前年よりも、患者さんの数を増やすこと。そしてその患者さんに、前年よりも単価の高いサービス、粗利益の多いサービスを受けていただくことである。
さらに、整骨院の受け入れ体制となる、「人材、設備、資本」の質と数を、成長拡大に先手で合致させていかなければ成長拡大は起こらない。
これが「成長拡大」の哲理である。これ以外の成長拡大の方向性はあり得ない。
たとえば、私たちの整骨院の昨年の患者さんが、仮に年間1、000人で、今後も1、000人であれば、それは成長拡大よりも、むしろ衰退を意味しているからだ。また、その1、000人の患者さんが、今後も昨年と同じ単価で、同じ粗利益でしか治療を受けていただけないのだとしたら、それだけで、私たちは永遠に誰の給料も上げることができないということなのだ。ほんとうによくわかって欲しい。
成長拡大は、どんな整骨院でも、患者さんの数を1、000人から1,500人にし、その1、500人を2、000人にも3、000人にも、1万人にもする方向性でしか計れない。または、昨年よりも、高い単価で、高い粗利益で、治療を受けていただくことでしか計れないのである。
私たちは患者さんを増やしていくために、新規店舗を出店し、地域を新たに加え、新しいサービスを追加し、新規患者さんの開拓を意識し、全員でこれに取り組むシステムを作り、紹介を頼り、口コミを意図的に発生させ、広く宣伝し、休眠客を掘り起こし、イベントやキャンペーンを企画し、治療やサービスの向上に努め、オペレーションの回転率を上げ、ライバルを意識し、そのライバルとあらゆる面で優位の差別化を目指さなければ、成長や拡大は実現できない。
それでは、整骨院の繁栄発展のもう一方のコンセプト「安定」とは、いったいどういうことなのか。
「安定」とは、私達の整骨院に、同じ患者さんが、繰りかえし、繰りかえし、繰り返し、末永く来院されることである。
これが「安定」というものの哲理である。これ以外の「安定」はないのだ。
たとえ、一時的に数多くの新規患者さんが来院されても、2回目の来院につながらなかったり、めったに来院されないということであれば、整骨院の安定など決して計れない。もし、こういう整骨院を作れば、その整骨院の寿命は瞬間的なものでしかないと言える。
どんな事業でも、お客様がいない事業などあり得ないのに、頭を下げることを嫌い、お客様を忘れて威丈高に商売をやろうとしていたり、売り物を磨くことを忘れてしまい、ライバルとはるかに劣ったものを提供していたり、永続的に来店される“仕掛け“の開発に、努力や工夫が不足していたり、結局、繰りかえし、繰りかえし、繰りかえし、可愛がって頂くことに意を尽くさないがために、業績を落としたり、潰れてしまうお店が数多い。
安定は成長拡大よりも至難の業である。繰り返し、繰り返し、繰り返し来院させることを“仕掛け”や“システム“として捉えることは不可欠の戦略課題なのだ。
さらに、私たちは、自院の売り物を磨かなければ安定を勝ち取ることはできない。
患者さんがなぜ私たちの整骨院に繰りかえし来院されているのか?逆に、なぜ、他の整骨院、整形外科、整体院に足を運ばれているのか?その因や要素の一つひとつが、患者さんの来院動機であり、私たちが磨くべき売り物なのだ。
「治療が上手だから」「以前やってもらって治ったから」「家族が通っているから」「土日・祝日もやっているから」「遅くまで開いているから」「先生の感じがいいから」「コストパフォーマンスがよいから」「評判がいいから」「ていねいにやってくれるから」「会社から近いから」「友達がこの店いいよと言っていたから」…と患者さんが言われる。
これらはすべて、売上や利益に直結する大事な売り物である。もっともっとこれらの売り物を磨くべきである。すべての売り物は、いつでも絶対的ではないからだ。
他院の売り物と比較をされて、優れていれば来院されるという実に相対的なものである。
今日、ライバルよりも優れていても、明日、ライバルがもっと優れたものを患者さんに提供すれば、患者さんは平気で他院に足を運ぶようになる。だからこそ、他の整骨院、整形外科、整体院を意識し、他院より優れた売り物を創り出すことが、繰りかえし、繰りかえし、繰りかえしを起こす大要因となる。
また、私たちは、お客様第一主義という考え方を貫いて安定を創造すべきである。
お客様第一という思想の根底には、お客様に好かれることを行うという「情」の課題がある。世の中の、あらゆる事柄の中で、情を超えるものはないというが、政治も、経済も、学問も、そして私たちが行う治療でさえも、情を超えることはできない。情とは喜怒哀楽の四者のことであるが、政治も経済も学問も治療も、極みは人間の幸福という情のためにあることを忘れてはならない。
患者さんに嫌われて流行る整骨院はないし、好かれて流行らない整骨院もないのだ。
患者さんに好かれ、末永く可愛がられるために、いったいどうしたらいいのか?治療中に交わす会話も、忙しい時の対応も、やむなくお断りする時の態度も、予約電話でのやりとりも、ハガキに書く文章も、その言葉と行動の一つひとつが、意図して選び抜かれたものでなければ、安定を築くことなどは難しい。
整骨院の繁栄発展には「成長拡大(増客)」と「安定(繰り返し)」という2つのコンセプトがある。この2つを同時に遂行することが肝心である。また、この2つの哲理を実行することこそが、組織を健全に運営することでもあるのだ。
(ウトプロジェクト事業発展計画書より一部抜粋)